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5年度監督指導 過労死ラインは全数監督 各種情報から選定 厚労省

  • 執筆者の写真: 里絵 渡邉
    里絵 渡邉
  • 2023年6月8日
  • 読了時間: 3分

〇情報公開請求で明らかに

 厚生労働省が令和5年度の監督指導について、いわゆる過労死ラインを超える長時間労働が疑われるすべての事業場に監督指導を実施する方針であることが本紙の情報公開請求により分かった。本紙が公開請求したのは今年度の監督指導に当たって留意すべき事項を示した通知で、一部は黒塗りとなっていた。同通知では、各種情報から月80時間を超える残業が疑われる事業場と、過重労働による労災請求があった事業場は全数監督を行うとしている。

 厚労省が開示に応じたのは「監督指導業務の運営に当たって留意すべき事項について」(令5・2・10、基発0210第1号)と題する通知。5年度の労働基準監督行政の重点課題を①長時間労働の抑制・過重労働による健康障害防止、②中小企業・適用猶予業務などに対する改正労基法の周知・支援、③労災発生状況に応じた労災防止――の3点としている。

 ①の長時間労働抑制については、各種情報から1カ月の時間外・休日労働が80時間を超えていると考えられる事業場と、過重労働による過労死等の労災請求が行われた事業場に全数監督を実施するとした。厚労省は平成27年度から、インターネット上の求人情報や書込みの監視を始めている。ネット監視で得た情報や労働者の相談などから、対象事業場を選んでいるとみられる。

 悪質な事業場は「劣悪事案」として、長時間労働是正の定着を確認するための監督指導を実施する。どのような事案が該当するかは黒塗りとなっており明らかでないが、長時間労働が常態化しているケースでは、一時的な是正だけでは不十分であり、常態化の改善まで監督指導を継続するとみられる。長時間の時間外・休日労働を可能とする36協定を届け出た事業場と未届けの事業場、人命・公益の保護の観点から緊急に業務を行った事業場への対応も掲げられたが、具体的な内容は黒塗りだった。

 ②の中小企業対応では、監督指導で労働時間などに関する法違反が認められた場合は、引き続き労働時間相談・支援班と働き方改革推進支援センターの活用を勧めるとした。同支援班は事業場による自主的な取組みが促進されるよう、集団指導や個別訪問などを実施するとしている。

 中小企業への「しわ寄せ」防止にも引き続き積極的に取り組む。労働基準関係法令の違反が認められないケースであっても、下請け通報制度の対象事案であれば、速やかに本省へ報告することとした。

 ③の労災防止については、災害発生時の監督を確実に実施するとした。実施に当たっては、災害の発生原因となった法違反だけでなく、リスクアセスメントについても必要な指導をしていく。

 産業安全にかかる監督指導では、墜落・転落災害、機械災害、転倒・腰痛防止、陸上貨物運送業における荷役作業の取組みを掲げた。産業衛生は化学物質、石綿、メンタルヘルス・パワーハラスメントなどが重点項目となっている。


労働新聞社『労働新聞』 令和5年6月5日第3403号2面 掲載記事より

 
 
 

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