〇キャリアアップ助成金で
厚生労働省は10月20日、キャリアアップ助成金に新コースとなる「社会保険適用時処遇改善コース」を新設するとともに、事業主向けQ&Aを公表した。いわゆる「年収の壁」対策として設置した同コースでは、新たに被用者保険に加入した労働者に本人負担分の保険料相当の手当支給などを行う企業に対し、労働者1人当たり最大50万円を助成する。受給要件であるキャリアアップ計画の作成・提出は、事業所単位で行う。原則として手当支給などに取り組む前に提出する必要があるが、来年1月末までに取組みを開始するケースについては、例外的に事後提出を認める。
同コースは令和7年度末までの時限措置。手当などにより労働者の収入を増加させる事業主向けの①手当等支給メニュー、労働時間の延長と基本給の引上げを組み合わせる事業主などを対象とした②労働時間延長メニュー、③併用メニュー――の3種類で構成する。
たとえば①では、一時的な手当である「社会保険適用促進手当」などで賃金アップを行った場合、3年間で労働者1人当たり最大50万円(大企業37.5万円)を支給する。
Q&Aでは、支給要件について詳しく解説。取組み内容を記載するキャリアアップ計画の作成・提出は、対象労働者ごとではなく、事業所ごとに1部作成すれば良いとした。計画書の作成時点で労働者に対して実施予定のメニューの具体的な内容を記載する。メニューは、労働者ごとに異なっていても問題ない。
メニューの選択に当たっては、仕事内容や処遇などについて対象労働者と面談などを行い、労使合意のうえで決定する必要があるとした。
同計画は取組み実施前に管轄労働局に提出する必要があるが、今年10月~来年1月末までに手当の支給などを就業規則に規定するといった措置を講じた場合には、1月末までの間に事後提出することを認める。
対象となる労働者については、今年10月1日以降に被保険者資格を新たに取得した労働者に限定されるとした。9月以前に資格を取得した労働者の収入を増加させたとしても、同コースの対象にならない。
厚労省は、新コースの追加に併せ、保険料算定の基になる標準報酬月額や標準賞与額の取扱いにおいて、特例措置を設定している。被用者保険に加入する際の保険料負担を軽減するために事業主が支給する「社会保険適用促進手当」については、最大2年間、標準報酬月額・標準賞与額の算定において考慮しない。
一方、割増賃金の計算に当たっては、同手当を毎月支払う場合には算定の基礎に含める。
労働新聞社『労働新聞』 令和5年11月6日第3423号1面 掲載記事より
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