〇対象労働者範囲も広げる
政府は11月10日、令和5年度補正予算案を閣議決定した。同月2日に発表した「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を実行するための裏付けとなるもので、厚生労働省関連では、人手不足対応の施策や三位一体の労働市場改革の推進に関する施策などを盛り込んだ。正社員転換を希望する非正規雇用労働者の正規化を促進するため、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を拡充する。中小企業が正社員化した場合の助成金額を現行の1人当たり57万円から80万円に引き上げるとともに、有期雇用の期間が長期化している労働者も新たに対象に加えるとした。
総合経済対策では、柱の1つに「持続的賃上げ、所得向上」を掲げた。人手不足対応と生産性向上を通じた賃上げ継続への支援に取り組むことのほか、構造的賃上げに向けて三位一体の労働市場改革を推進することを明記している。具体的な施策例として、人手不足が顕著な分野の人材確保に向けたハローワークの体制拡充や、キャリアアップ助成金を活用した非正規雇用労働者の正社員化の促進などを示した。
11月10日に閣議決定した補正予算案では、これらの施策の関連経費を計上している。
ハローワークの体制拡充については、全都道府県労働局に「就職支援コーディネーター」を配置したうえで、医療・介護・保育・建設・運輸・警備分野を対象に、業界団体や地方自治体などと連携した協議会を開く。地域全体で人材確保の取組みを推進していく。さらに、離職率が高い介護事業所における人材確保と雇用管理改善を集中的に支援するため、ハローワークに配置するコーディネーターを増員する。
非正規雇用労働者の正規化促進の取組みとしては、キャリアアップ助成金(正社員化コース)を拡充する。同コースは、就業規則に規定した制度に基づき、勤務地限定などの多様な正社員を含む正社員に転換または直接雇用した場合に支給するもの。拡充によって、非正規雇用労働者の雇用の安定と処遇の改善につなげる。
具体的には、現行制度において中小企業で労働者1人当たり57万円、大企業で同42万7500円としていた支給額を、順に80万円、60万円に増額する。従来は通算雇用期間が3年を超える有期雇用労働者は対象にならなかったが、雇用期間が6カ月以上の労働者はすべて対象に含める。
このほか、正社員転換制度を新たに規定して転換させた場合の加算措置を新設。中小企業には20万円、大企業には15万円を上乗せ支給する。
多様な正社員制度を新設して転換させた際の加算額も大幅に増やす。中小企業は現行の9万5000円から40万円、大企業は7万1250円から30万円に引き上げる。
労働新聞社『労働新聞』 令和5年11月20日第3425号1面 掲載記事より
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