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最賃上昇や賃上げを根拠に 労務費転嫁で指針 政府

  • 執筆者の写真: 里絵 渡邉
    里絵 渡邉
  • 2023年12月14日
  • 読了時間: 3分

〇受・発注者へ12の行動示す

 内閣官房と公正取引委員会は11月29日、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表した。発注者と受注者の採るべき行動/求められる行動を示したもので、価格交渉に際しては最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額などの公表資料の活用を求めた。受注者が労務費上昇の根拠として用いた場合、発注者は提示額に合理性を認めて尊重すべきとしている。指針に沿わない行為で公正競争を阻害するおそれがある場合、独占禁止法や下請代金法に基づき厳正に対処する旨も明記した。労務費の転嫁率が低い10業種などを中心に、今後周知活動を展開する。

 同指針では、発注者と受注者それぞれが採るべき行動/求められる行動を列記し、12の行動指針として取りまとめた。発注者向けに6項目、受注者向けに4項目、双方に対して2項目を示すもので、発注者側トップの関与や定期的な協議の実施、交渉記録の作成・保管などの行動を求めている。物価上昇を乗り越えて持続的な構造的賃上げを実現するため、雇用者の7割が働く中小企業に賃上げ原資の確保を促すのが狙いだ。

 双方に対して価格転嫁に向けた協議を促す一方で、労務費上昇の理由や根拠を示す資料として、公表資料を活用するよう求めた。具体例として都道府県別の最低賃金やその上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率(厚生労働省による民間主要企業春季賃上げ集計を例示)のほか、国土交通省による公共事業設計労務単価や標準的な運賃などを挙げている。

 そのうえで発注者に対し、受注者が公表資料を用いて提示する希望価格については、「合理な根拠があるものとして尊重すること」を求めた。仮に満額受け入れられない場合は、自らその根拠や合理的な理由を説明すべきとしている。公取委は公表資料を根拠に用いるよう促す理由として、発注者から過度に根拠を求められ、受注者が交渉を断念するケースが散見されたためとしている。

 同指針では、12の行動に沿わない行為により公正な競争を阻害する恐れがある場合には、独占禁止法および下請代金法に基づき厳正に対処する旨も明記した。他方で発注者としてすべての行動を適切に採っていれば、通常は問題が生じないと考えられるとしている。

 公取委では、今年5月から労務費の転嫁に着目した特別調査、個別企業へのヒアリングを展開しており、年内をめどに最終結果を取りまとめる予定。同指針でも取組事例や速報値を紹介しており、今後は労務費の転嫁率(転嫁の要請に対して引き上げられた金額の割合)がワースト10となった自動車整備業、輸送用機械器具製造業などに対し、同指針の周知を図っていくとしている。


労働新聞社『労働新聞』 令和5年12月11日第3428号5面 掲載記事より

 
 
 

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