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執筆者の写真里絵 渡邉

手当支給企業に助成金 3年間で1人50万円 厚労省・「年収の壁」支援パッケージ

〇申請人数制限は設けず

 厚生労働省は、短時間労働者がいわゆる「年収の壁」を意識せずに働けるようにするための「支援強化パッケージ」を発表した。「106万円の壁」対策として、キャリアアップ助成金に新コースを設置する。賃上げや、労働者負担分の保険料に相当する手当支給などを行う企業に対して、労働者1人当たり最大50万円を助成する。令和7年度までの時限措置で、1事業所当たりの申請人数に上限は設けない。企業が手当により肩代わりした本人負担分の保険料相当額については、保険料算定の基礎に含めない。10月中に改正雇用保険法施行規則を公布し、同月1日に遡って適用する方針。

 社会保険に関する「年収の壁」には、従業員100人超企業で週20時間以上勤務した場合に厚生年金・健康保険に加入して保険料負担が生じる「106万円の壁」と、配偶者の被扶養者から外れる「130万円の壁」の2種類がある。

 支援強化パッケージでは、「壁」ごとに、年金制度改正を伴わない当面の対策を打ち出した。

 106万円の壁対策では、既存のキャリアアップ助成金に、新コースとなる「社会保険適用時処遇改善コース」を創設する。新たに被用者保険の適用を受ける短時間労働者に対して、収入を増加させる措置を講じる事業主を支援する。

 支援メニューには、賃上げや、一時的な手当の支給などにより収入増を図る事業主向けの「手当等支給メニュー」と、労働時間の延長と基本給の引上げを組み合わせて収入増につなげる事業主を対象とする「労働時間延長メニュー」の2種類を用意。両メニューを併用できるケースも設定する。助成額は企業規模による差を設け、大企業は中小企業の75%とする。

 手当等支給メニューは、賃上げなどの取組みを開始してから原則3年間で最大50万円(中小企業)を助成するもの。

 1年目は、賃上げ(基本給や賞与アップ)または一時的な手当支給により賃金15%以上相当を労働者に追加支給した場合に、20万円を助成する。2年目も同様の取組みに対して20万円を助成するが、3年目に基本給引上げまたは労働時間延長により賃金の18%相当を引き上げたことが確認できない場合には、半額の10万円しか支給しない。

 3年目は、手当の支給で収入をアップさせる場合は対象にならない。基本給の引上げか、労働時間延長によって18%以上相当分を増額させていれば、10万円を助成する。

 1~2年目の一時的な手当の支給に関しては、標準報酬月額の算定対象に含まない「社会保険適用促進手当」制度を導入する。保険適用によって新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限に、支給した手当を算定に反映させない。標準報酬月額が10.4万円以下の者が対象になる。

 労働時間延長メニューは、所定労働時間を4時間以上延長させる企業などが対象で、中小企業の助成額は1人当たり30万円。「労働時間を3~4時間未満伸ばしたうえで5%以上賃上げ」、「2~3時間未満伸ばしたうえで10%以上賃上げ」などに対しても支給する。

 一方、130万円の壁対策では、一時的な増収によって130万円を超える際、事業主の証明を添付することで、連続2年まで被扶養者に留まれるようにする。


労働新聞社『労働新聞』 令和5年10月9日第3420号1面 掲載記事より

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