物流事業者81社と14の業界団体で組織する日本物流団体連合会(物流連、池田潤一郎会長)は、女性活躍推進に関する調査検討報告書をまとめた。30歳前後で離職率が高まる傾向を踏まえ、就業継続の支援策としては育児休業や時短勤務などの仕事を免除する制度ではなく、働く時間・場所を柔軟にして早期復職、早期フルタイム化を図るべきと指摘した。併せて海外研修に3年前倒しで参加させるなどの取組みを紹介し、育児などのライフイベント前に多くの経験を積む機会を付与すれば、成長意欲の高い人材を増やすことにもつながるとしている。
報告書は、会員事業者の人事担当者ら約30人が参加したダイバーシティ推進ワーキングチーム(WT)での活動成果をまとめたもの。2021年10月から約1年半にわたり、議論を重ねた。会員事業者とその従業員へ調査を実施したうえ、各社の取組み状況、推進の課題を共有している。
事業者33社とその従業員373人から回答を得た調査では、女性比率、女性管理職比率の低さに加え、若年層を中心に昇進意欲の低さも明らかになっている。管理職への昇進意欲を尋ねた従業員調査では、「昇進したい」「どちらかといえば昇進したい」の合計が男性では60.2%だったのに対し、女性は25.3%だった。「昇進したい」女性の割合は、20歳代で4.6%、30歳代でも11.5%に留まっている。
報告書ではこれらを踏まえ、女性の活躍を推進するうえで重要な項目として①就業継続の支援、②社内の意識改革、③育成・キャリアアップのための取組み強化、④職域の拡大、⑤女性本人の意識改革・ロールモデル、⑥会社全体の推進態勢の6項目を挙げた。
就業継続支援に関しては、WT内でも30歳前後で女性の離職率が上がる企業が複数社あり、育児などのライフイベント後も能力を存分に発揮できるよう、働く時間や場所を多様化する制度が重要と指摘した。育休や時短勤務などの仕事を免除する施策ではなく、早期の復職・フルタイム化を促してキャリアアップを支援するため、フレックスタイム制、時差出勤、テレワークなどの活用が望まれるとしている。
育成・キャリアアップの強化に向けては、ライフイベント後は転勤や宿泊を伴う出張が困難になることから、それ以前にできるだけ多くの経験を積む重要性も強調した。メンバー企業からも通常30歳前後で行う海外研修に、入社4年目で参加させるなどの取組みが報告された。成功体験や仕事の醍醐味を味わうことが就業継続を促し、成長意欲の高い人材の増加につながるとしている。
【労働新聞 令和5年3月6日第3391号5面 掲載記事より】
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