〇「1カ月」への短縮案も
厚生労働省は、雇用保険制度のあり方を検討してきた「雇用保険制度研究会」(座長・山川隆一明治大学教授)の議論の中間整理案を明らかにした。約1年間の議論で出た委員の意見を列挙し、今後の制度運営の選択肢として提示している。新しい資本主義実現会議で議論されている、自己都合離職者に対する基本手当の給付制限期間の見直しについては、安易な離職や受給目的の離職の防止が課題と指摘。「失業中の生活の安定を含めて考えると、給付制限は1カ月程度でも良い」との意見を盛り込んでいる。
雇用保険制度は、1947年に失業保険制度が創設された後、失業予防につながる附帯事業を備えた総合的な保険制度として1975年に誕生し、労働者の雇用のセーフティーネットとしての役割を果たしてきた。
ところがコロナ禍では、附帯事業である雇用調整助成金の特例措置によって支出が大幅に増加し、雇用保険財政が悪化。財政安定化に向けた昨年4月の雇用保険法改正の際、労働政策審議会の議論や国会での法案審議において、給付と負担のあり方などに関する課題が指摘されていた。
このため、昨年5月に学識経験者による同研究会を立ち上げ、基本手当や教育訓練給付のあり方、育児休業給付とその財源などについて議論を重ねてきた。今年4月26日に開いた会合で事務局は、これまでの議論での意見を中間整理案にまとめ、委員に示している。
基本手当の給付日数については、所定日数を延ばすと失業期間が長期化し、労働者の技能・意欲が低下する恐れもあるとして、一律延長には慎重であるべきとの意見を記載した。
政府の新しい資本主義実現会議でも論点になっている自発的離職者への給付制限(原則2カ月)に関しては、短縮した場合に安易な離職や受給目的の離職をどのように防ぐかが課題とした。「成長産業への労働移動を促すのであれば、給付制限期間の短縮よりも、在職者支援や教育訓練を充実させるべき」との声も盛り込んだ。安易な離職の防止と、失業中の生活の安定のバランスを踏まえ、「給付制限期間は1カ月程度でも良いのでは」との意見を記載している。
支出が増加傾向にある育休給付については、雇用保険で引き続き維持すべきか見直しが必要とした。また、男性の育休取得の強化などをめざすのであれば、雇用保険ではなく家族政策として捉えるべきとの意見があった。その場合には一般会計で賄うべきとしている。
労働新聞社『労働新聞』 令和5年5月15日第3400号1面 掲載記事より
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