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労災認定 持帰り残業を労働と認めず 業務の期限指定なく 行田労基署

  • 執筆者の写真: 里絵 渡邉
    里絵 渡邉
  • 2023年1月18日
  • 読了時間: 2分

〇休業補償給付を不支給に

 自宅での作業を労働時間と認めず――埼玉・行田労働基準監督署(武田昌代署長)が、大手半導体関連メーカーで研究開発プロジェクトに従事していた労働者がうつ病を発症したのは、業務上によるものではないとして、休業補償給付を不支給処分としていたことが分かった。審査・再審査請求も棄却済み。再審査では「プロジェクトを遅延させないために必要に応じて持帰り残業をすることを含めた、包括的な業務指示があった」とした。しかし各業務の期限指定まではなかったとして、持帰り残業を労働時間と認めなかった。

 同労基署の意見書などによると、労働者は「自宅で働いていた時間(持帰り残業)を含め、平成29年9~10月に最大月201時間残業した」と主張している。同年10月頃にうつ病を発症した。

 同労基署は時間外労働のうち、事業場内で行ったもののみを労働時間と認め、発症前6カ月は最大で月8時間43分だったとした。持帰り残業は「深夜や休日に業務に関するメールをしていることは確認できたが、事業場は業務を指示しておらず、作業の緊急性も否定している」こと、「同僚は持帰り残業をしていないと述べている」ことなどから、認められないとした。「仕事の内容・量の変化」による心理的負荷は「弱」と判断。31年3月に不支給処分とした。

 労働者は処分の取消しを求めて審査・再審査請求を行ったが、それぞれ令和3年8月と4年7月に棄却された。

 再審査では、平成26年に会社が、「経費削減のために残業を月9時間以内に制限する。超過した場合は懲戒処分の対象となる」という旨を社内に通知していたことを確認した。同通知ではサービス残業を禁止しているが、労働者が28年10月から従事していたプロジェクトのリーダーが「延期はあり得ない」旨の発言をしていること、労働者が夜間に送信したメールに会社が注意した形跡がないことなどから、「持帰り残業を含めた包括的な業務指示があった」と認めた。一方で、「どの業務をいつまでに完成させる必要があるか」という具体的な指示までは確認できないとした。

 また労働者が業務に関して、「専門書を2、3冊読んで勉強しないと理解できない」と述べていたことから、私的な能力向上のための勉強にも時間を費やしていたと推察。事業場外での作業について、そうした勉強時間と峻別することは困難であり、労働時間と認めることはできないとした。

 労働者は決定を不服とし、国を提訴している。


労働新聞社『労働新聞』令和5年1月16日第3384号4面 掲載

 
 
 

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