〇能力向上で労働者支援も
政府は6月16日、政策の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。「新しい資本主義の加速」を柱に、成長分野への労働移動の円滑化やリスキリングによる能力向上支援など労働市場改革を進め、構造的に賃金が上昇する仕組みを構築するとした。自己都合退職時の退職金減額といった労働慣行を改めて労働移動を促進するため、モデル就業規則の改正や退職所得課税制度の見直しを進める。能力向上支援では、教育訓練給付など個人に直接給付する支援策を強化する。多様な働き方の推進にも注力し、選択的週休3日制の普及などに取り組むとした。
骨太の方針では、三位一体の労働市場改革を通じた構造的賃上げの実現と、「人への投資」の強化、分厚い中間層の形成をめざすとした。
三位一体の改革として、①リスキリングによる能力向上支援、②成長分野への労働移動の円滑化、③個々の企業の実態に応じた職務給の導入を進める。
労働移動の円滑化に向けた施策には、退職金制度に関する労働慣行や退職所得課税の見直し、失業給付制度の見直しなどを挙げた。
民間企業の一部では、自己都合退職時の退職金の減額や、勤続年数・年齢が一定基準以下の場合に退職金を支給しないケースがあることから、厚生労働省が定めるモデル就業規則を改正する。勤続年数による制限を設けている点や、会社都合退職者と自己都合退職者とで異なる取扱いを例示している点を改める。
退職所得課税については現在、勤続20年を境に勤続1年当たりの控除額が40万円から70万円に増額される仕組みになっている。これが積極的な離職を妨げているといった指摘もあるため、見直しを図る方向だ。
また、現行の失業給付において、自己都合離職と会社都合離職とで受給までの期間に差があることから、給付申請前のリスキリング実施などを条件に、受給までの期間をそろえる。
能力向上面では、個人への直接支援を強化するとした。教育訓練給付の拡充や、訓練中の生活を支えるための給付・融資制度の創設を検討する。
三位一体の改革と並行し、多様な働き方を推し進める方針も盛った。多様な働き方を支えるセーフティーネットとして、週所定労働時間20時間未満の労働者に対する雇用保険の適用拡大を検討する。テレワークや選択的週休3日制の普及、勤務間インターバルの導入、副業・兼業の促進などにも取り組む。
労働新聞社『労働新聞』 令和5年7月3日第3407号1面 掲載記事より
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